【心身養生を考える からだメンタルラボblog】

身体と心へのアプローチを実践しているからだメンタルラボの活動情報や、鹿児島市での活動を地域支援活動を行うこだちの活動情報、身体と心のつながりについてのお話などを掲載しています。

大事な場面で緊張をほぐす方法を身につける!臨床心理学的トレーニング

大事な試験や就活の面接など、

なるべく緊張したくない場面は色々ありますよね。

 

特に普段から緊張しやすい人などは、

大事な場面に向けて、

色々な工夫をしてみたけど、

やっぱり緊張して頭が真っ白になってしまった。

そういう経験も少なくないのではないでしょうか?

 

緊張しやすい人は、

頭で「緊張しないようにしよう」

と考えることによって、

更に緊張が強くなる悪循環

陥っていることがあります。

 

今回の記事では、

臨床心理学の中の

動作法という理論を基に、

緊張のメカニズムと

緊張をほぐす力をつける

トレーニング方法を紹介します。

 

 

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 目次

緊張とは身体で感じるもの

緊張というのは本来、

身体に生じる現象です。

しかし、

それが生じる背景には

こころが大きく関係しています

 

この関係を理解しておくことで、

緊張をほぐすための方法が理解しやすくなります。

 

身体で生じる緊張とこころの関係

 まずは、

身体に緊張が生じる時には、

こころがどんな状態になっているのか、

動作法の創始者である成瀬悟策の理論を基に

紹介していきます。

 

動作法とは?

この心理療法は九州大学名誉教授である成瀬悟策氏が開発した、

日本オリジナルの心理療法の一つです。

 

元々、

脳性麻痺のある人々の訓練の中で、

催眠によって麻痺している腕が動いた

という事実から、

麻痺のある身体を

より動くようにするための方法として研究が進みました。

 

じゃあ、

「これは身体に麻痺がある人のためのものなのか?」

と言うとそうではないのです。

 

この技法は研究が進む中で、

一般の成人で肩こりや

腰痛のある方に適応すると、

肩こりや腰痛などの

身体症状にも効果があることがわかったのです。

 

それとともに、

身体症状が解消されると

精神的にも良い状態になることがわかり、

心理的な不調のある人々にも

用いられるようになっていきました

 

現在は、

震災後の心のケアなどにも利用され、

日本心理臨床学会のHPでは、

新潟中越地震の心のケアで用いられた

動作法のやり方やレポートが掲載されています。

www.ajcp.info

 

では、身体の緊張と心の不調は

どのように関係しているのでしょうか?

こころがこだわると身体も緊張する

こころにこだわりが出来上がるまで

動作法の創始者である

成瀬悟策氏は

“身体の緊張はこころの不調に関連がある”

という考え方をしています。

ではまず、こころの不調がある状態

というのはどういった状態でしょう?

 

動作法では、

こころのこだわり傾向が

強くなっている状態を

こころの不調がある状態だと考えます。

そのこだわり傾向は

成瀬悟策の著書“臨床動作法”において、

“考え”たり“反省”→“気にする”→“気になる”→“拘り” 

の順に強くなっていくと表現されています。

 

詳しく説明すると、

“考え”たり“反省”

最初は周りや自分のことが

気になって少し“考え”たり、“反省”する。

この状態ではすぐ他のことに注意が移る。

健康な誰にでも生じる状態

 

“気にする”

難しいことがあったり、ミスをしたり、

うまくいかないことが重なると

“気にする”ことが増えてくる

 

“気になる”

気にしだすことが増え、

だんだんそれを思い出す頻度が増し、

軽い変性意識状態になったり、

意識的に気にしないようにしても

“気になる”ようになっていく。

 

“拘り(こだわり)”

それが更に継続すると、

“拘り(こだわり)”へと変貌していく。

こだわりになると、

それに捕らわれたり、思い込んだり、

どんどん

生活に支障が出るようになっていきます。

 

このような

心のこだわりが変化していく様子は

自身の体験としても

想像出来るものではないでしょうか?

このこころの状態の変化に合わせて、

からだは変化していくのです。

こだわりによる身体の変化

同書で成瀬悟策は

こころの変化に合わせて、

身体は

それなりの緊張感を感じることでこころを落ち着かせ、安堵した気持ちを保とうとする。 

と表現しています。

 

例えば、

身体は何かをしようとする時に緊張します。

特に嫌なことをする時や

辛い感情を耐える時にその緊張は強くなります。

 

これは身体が緊張することで、

心が受ける衝撃を軽減している

と考えるとイメージしやすいでしょうか。

 

緊張の悪循環が生まれるステップ 

最初は安堵するための緊張は弱くても、

毎日何かあれば身体に力を入れてやり過ごす。

これを毎日続けていると、

緊張がほぐれず残っているうちに、

次々と新たな緊張が身体に生じ、

だんだんとそれが積み重なり

処理しきれなくなっていくわけです。

 

こうして、

身体にはほぐれていない、

多くの緊張が残ってしまい、

可動域が狭くなる、

肩こりや腰痛、

活動生の低下などの症状を生みます。

 

それに伴って、

身体の衝撃を和らげる機能も弱くなり、

こころは衝撃をそのまま受けるようになります。

すると、

更に周りの色々なことが気になり、

こだわりの状態に陥りやすくなってしまい、

また身体が緊張しやすくなる悪循環となるのです。

 

これは、動作法の中で、

身体が緩むようになり、

緊張がほぐれてくると、

心も自由に豊かになってくるという、

臨床現場での観察から考えられた説です。

 

実際の経験の中で 

現場で相談に来る人達を見ていると、

不安を感じやすかったり、

イライラしやすい人などは、

緊張が強くなっていることも多いです。

 

その緊張が自分でほぐせるようになるにつれて、

不安感やイライラも変化することがあります。

 

緊張を自分でほぐせるようになっていった結果、

  • 不登校の高校生が一月ほどで学校復帰をしたり、
  • 不安で学校に母親と一緒でないと登校できなかった子が、翌日から一人で登校したり、
  • 半年ほどで摂食障害の症状が完治したり

といった効果が出たこともありました。

 

自分で緊張が強いなと思う方、

緊張があるかよくわからないという方も、

以下で紹介するようなトレーニング方法を試してみてください。

 

緊張具合をチェックする方法

「緊張しすぎて困る」と感じている人は、

身体に蓄積している

緊張の量も多くなっています

 

「緊張は特にない」という人はいいのですが、

「自分が緊張しているかよくわからない」という人も

実は危険信号だったりします。

 

自分で緊張しているか分からないということは、

緊張が当たり前になりすぎて、

その感覚すら分からなくなっている場合があるからです。

 

まず、緊張しやすい人も、

よくわからない人も、

緊張がわかりやすい部位の一つである、

肩の緊張のチェックをしてみましょう。

 

<肩の緊張チェックやり方>

腕をピンと前に伸ばし、

以下の図のように、

腕を前から上にまっすぐ上げてみてください

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肩の緊張がない人は耳の真横、

真上の位置までしっかり上げることが出来ます。

が、緊張が強くなっている人は、

痛みや動きにくさが出てしまい、

そこまで上げることがなかなか出来ません

真上まで上がっても、

そこで30秒ほど待ってみると

痛みが出るというのも緊張があるサインです。

 

ほぐれていない緊張が残っていると、

このように動かす中で痛みが出てくることがあります。

  

緊張を自分でほぐす力をつける練習方法

ここからは動作法のやり方を参考に、

アレンジを加えた、

緊張を自分でほぐす力をつけるための

練習方法の紹介です。

 

緊張しやすい状態を脱するためには、

  1. 自分で緊張を感じられるようになる
  2. 気づいた緊張を自分でほぐすことを練習する

というステップを踏むことが大切です。

  

①緊張を感じられるようになるために

緊張をほぐすことが出来るようになるためには、

まず自分の身体に注意を向ける練習を通して、

自分の緊張に気づく力をつけていく必要があります。

 

肩や背中、首などは緊張が残っていることが多い部位ですが、

そこを優しく揉んでみて、堅い感じ、柔らかい感じなど、

どんな感じがしているかを味わってみましょう

 

焦らず丁寧にゆっくりと、

手の触っている感じをしっかりと味わえたら、

触られている部分にも意識を向けて、

触れている側、触れられている側、

両方の感覚を味わいます。

 

触っての感覚がしっかりわかってきたらステップアップです。

目を閉じて、自分の身体の感覚に注意を向けてみましょう。

慣れてくると、「ここが緊張してるな」「ここが硬いな」

「ここが楽だな」「ここが気持ちいいな」などと、

いろいろな感覚がつかめるようになっていきます

 

その感覚がわかるようになるだけでも、

緊張のしやすさは変わってくることがあります。

一日だけではなかなか、

感覚は身につきません。

 

日々の生活の中で、

ちょっと時間が空いた時などに

意識して練習するようにしてみてください。

 

②気づいた緊張を自分でほぐすことを練習する 

自分の身体の感覚がわかってきたら、

緊張をほぐすための練習として、

肩の動作法に取り組んでみましょう。

 

肩上げ

1.背もたれに寄りかからないで、背筋を伸ばして座ります。

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2.頭・肩・背中を曲げないように気を付けながら、

  両肩を耳の方にゆっくりと引き上げていきます。

 

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3.上げきったところで、顔・肘・両手・お腹・背中など、

  肩以外の部位に力が入っていないか確かめ、余計な力は抜いてみましょう。

4.最後に、肩の力を意識して、その力をすっと抜いていきます。

  

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5.肩の力が抜けたら、その脱力感を気持ちよく味わいます。

  うまく味わえると、更に力が抜けて最初より肩が下がることがあります。

  

緊張に気づき、

それを自分でほぐす力がついてくると、

自分が「緊張してるな」と気づいた時にも、

自分で意識して身体の緊張をほぐし、

こころを落ち着かせることが出来るようになってきます

また、いつも気になっていたことや、

不安に感じていたことが、

「大したことじゃないと」

思えるようになってくることもあります。

 

 

クライエントの中には、

自分が緊張していることに気づけ、

それを緩めることが出来るようになると、

自信がついてきたと語る方もいます

 

緊張をほぐすための方法は実はなんでもいい

ここまで説明しておいて、

身も蓋もないように感じるかもですが、

これは非常に重要な点です。

 

自分の緊張をしっかり感じる力がついてくれば、

緊張をほぐすための練習は

呼吸法やヨガなど、

自分が気持ちいいと感じる方法を使って

身体を動かすのでも構いません。

 

大事なことは気持ちよく、

緊張に気づき、

それがほぐれる感覚を味わうことです。 

なぜ「気持ちいい」と感じるのがいいのかは

こちらの記事を参考にしてください。

  

www.karadamental-brog.com

 

まとめ 

頭でいくら考えても、

身体が緊張していると

緊張しやすさはなかなか変わりません。

 

まずは毎日、少しずつ自分の身体に注意を向け、

緊張に気づけるようになること、

そしてその感覚を味わいながら

普段から自分で緊張をほぐす体験を積み重ねておくこと。

 

そうすることで、

大事な場面においても、

緊張しにくくなったり、

緊張してもほぐすことが出来るようになっていきます。

 

また、特定の状況や言葉で強く緊張を感じるという方は、

トラウマやフラッシュバックの影響もあることがあります

そういった場合は

こちらのセルフケアの方法が役に立つこともありますので、

一度ご覧になってみてください。

www.karadamental-brog.com