心身に不調が生じた時、
自分で出来るケアには様々なものがあります。
何も知らないと、
難しいことをしないといけない気になりますが、
実はちょっとした工夫でラクになることもあります。
ただ、そのためには、
その工夫を知らないといけません。
今回の記事では、
心身の不調の様々なケア方法を知るのに
オススメの一冊“心身養生のコツ”を紹介。
著者について
この本の著者は精神科医の神田橋條治先生です。
過去の記事でも紹介していますが、
精神分析の達人であり、
日本の精神科医療のカリスマと言われている医師です。
50年を超える臨床経験の中で、
多くの心身の不調に悩む方を治療されており、
今も鹿児島の伊敷病院にて
週に2日だけ診療をされているそうです。
来られた患者さんが改善するため、
数ヶ月待ちもザラにある精神科医療の中で、
当日診療を受け入れ続けているというところからも、
その偉大さが伺い知れるところです。
その神田橋先生が、
臨床経験に基づいて患者さんが
自身の養生について役立つ
様々なケア方法をまとめたのが
“心身養生のコツ”です。
“ 心身養生のコツ”について
目次は以下のような内容となっています。
まえがき/改訂版のまえがき/初版のまえがき
第一章 養生のための物語
第二章 『感じる』
第三章 『緩む』
第四章 『陰と陽』
第五章 『骨格』
第六章 呼吸
第七章 『動く』
第八章 寝る
第九章 『気と経絡』
第十章 『トラウマの治療』
第十一章 『愛着障害』
第十二章 『フィードバック』
第十三章 『フィードバック以外の養生の工夫』
第十四章 こころの養生法
第十五章 症状の中に自然治癒力の働きを見つける
第十六章 『養生のための図柄』
第十七章 薬など
第十八章 いろいろな症状や病理への対処
第十九章 「治療」との付き合い
あとがき
索引
この本は、
以前は精神科養生のコツ
というタイトルで出版されており、
- 熟練や特別な知識がいらず、自分でできて、人に教えてあげることもできる。
- お金や道具がいらず、いつでも・どこでもできる。
- 天然の食品や自然の物以外を、できるだけ体内に入れない。
といったテーマに沿って書かれていました。
が、今回の改訂では、
そこに更に神田橋先生が現場で用いている
残しておきたいと思う技術も掲載されている
という非常に濃密な一冊となっています。
目次を見ても分かる通り、
病というものの捉え方から、
五感や体の扱い、
さらにトラウマや愛着へのケア、
医療との関わり方など、
非常に幅広い情報が掲載されています。
養生の目的で読まれる方は、
一冊丸々を読む必要はありません。
自分が興味を惹かれた部分、
役に立ちそうと感じた部分だけを見るだけでも、
参考になります。
一つの章を見ると、
関連する他の章も紹介されているので、
必要な場合には、
そこから深めていくということが出来ます。
感想
心身の養生のため出来ることの幅広さ
目次を見ても分かる通り、
この本で紹介されている様々な工夫は
多岐にわたっています。
これは、
心身の不調の背景には、
心のあり方や体のあり方、
意識の持ち方など、
様々な要素が絡み合っているからです。
何か気になること、
悩んでいることがあっても、
それが変えられないことであることは多いです。
そういった時に、
その問題は変えられないけれど、
自分の心や体といった
他の部分に少し工夫をする。
そうすることで、
ラクになる選択肢を増やす。
そういったことを学べる一冊です。
日々の試行錯誤の仕方がわかる
この本を読んで、
一番大切だと私が感じた点は、
自分の感覚に従うことの重要性です。
それについては、
以前の記事でも少し触れていますが、
もう少し丁寧に説明していきます。
本書の中では、
「気持ちがいい・悪い」という感じをつかんで、その感じですべてを判定すること。
が、養生の最も基本であると述べられています。
そのためには、
- これをやってみて良い感じがする。
- これをやると嫌な感じがする。
これを何かをした後に感じることが大切です。
それだけでなく、やってみる前に
- これをやると良い感じがしそう
- これをやると嫌な感じがしそう
と予想をしてみる。
その上で、
- やってみて思ったよりいい感じだ
- やってみて思ったより悪い感じだ
ということを一つずつ確認していく。
そうしていくことで、
自分の中で調子を良くするための
選択肢を増やせるのはもちろん。
予想の当たり外れを積み重ねていくことで、
だんだんと意識しなくとも、
自分に良い悪いを選べるようになっていける
可能性があるのです。
生活に追われ、
余裕がなくなり、
精神的にもしんどくなってきていると、
この感覚は意識する余裕がなくなります。
そうなると、
自分にとって悪い状態を呼ぶものだけを
自然と選んでしまうこともあります。
そこで方向転換を図る一つの方法として、
自分の感覚を活かすという方策があるといえます。
自分の健康についての興味の方向性を知る
本書の中では、
色々な分野の養生のコツが紹介されます。
部分によって、
非常に興味のある部分、
納得できる部分もあれば、
全然興味の湧かない、
不信感を感じる部分もあるかもしれません。
それは悪いことではなく、
今の自分の感性には合わない部分です。
この部分は自分に合わないんだなと感じれば、
それがまた「自分の感覚に従う」の第一歩になります。
興味を惹いた部分については、
それをきっかけにして、
更に関連分野の本などにも触れてみると、
より世界が広がっていくかもしれません。
そういった形で、
自分にあった心身の健康法を見つける
きっかけとすることも出来ます。
その他
読んで体験することが求められる一冊
本書で掲載されている養生の多くは、
実際にワークとして簡単に試せるものも多いです。
それらのワークは実際にやってみて、
どんな感じがするかを確かめて
初めて自分に合うのかどうかが分かります。
精神医学についての知識を求めるだけであれば、
もっと他の本を見てみる方が無駄がないかもしれません。
実際に体験しながら、
自分の心身の養生について、
より理解を深めていきたいという方に
ぜひ読んでみていただけたらと思います。
他の参考資料
本書を読まれて、
神田橋先生の技術や考え方について、
興味を持たれた方は以下の本もオススメです。
技を育む
神田橋先生が様々な技法をトレーニングしてきた、
考え方や経緯について紹介されています。
精神科診断面接のコツ
精神科診療における面接技術や
そのトレーニング方法について紹介されています。
精神療法面接のコツ
精神療法を行っていくにあたっての
ポイントやトレーニング方法について紹介されています。
いのちはモビール
神田橋先生の整体の師匠という白柳先生との対談です。
治療観や技術の発達などについて、
精神医学と整体のそれぞれの視点から
共通点や相違点などについて知ることが出来ます。