【心身養生を考える からだメンタルラボblog】

身体と心へのアプローチを実践しているからだメンタルラボの活動情報や、鹿児島市での活動を地域支援活動を行うこだちの活動情報、身体と心のつながりについてのお話などを掲載しています。

【困った時に固まる、言葉が出ない】脳の働きから理解する対応のヒント

困った時、

トラブルが起きた時に、

固まって何も言えなくなる。

 

子ども達、

特に発達障害の傾向があったりする子には、

よく見られる現象です。

 

それを見て周囲の大人は、

ふざけていると思うこともあれば、

何考えているか分からないと感じたり、

対応に困ってしまうことがしばしばあります。

 

しかし、この現象というのは、

人間であれば起きて当然の現象なのです。

何が起きているのかが理解できると、

対応策を考えるヒントになります。

 

今回の記事では、

そういった現象が起きる背景と

その対策について、解説していきます。

 目次

何かがあって固まるという現象は誰にでも起きる

発達障害などの特性のある子どもたちが

トラブルなどをきっかけに固まる姿を見ると、

これはその子の障害ゆえの現象だと考えがちです。

 

ところが、これはどんな子どもにも起きますし、

たとえ大人であっても生じる現象なのです。

 

まず何が起きているのか。

固まっている状態というのは、

脳がうまく働かなくなっている状態です。

 

これは例えば、

人前での発表に強く強く緊張して、

言葉がうまく出なくなっている。

考えようと思っても頭が回らない。

 

あるいは、

どうしても許せないことがあり、

怒り心頭といった状態の時には、

怒りを表す簡単な言葉は使えても、

普段のような丁寧な説明が出来ない。

 

また、

非常に悲しく涙が止まらない時に、

他のことを考えようとしても、

悲しい気持ちでいっぱいで何も手が付かない。

 

以上のような体験、 

思い当たるものは一つくらい

あったのではないでしょうか?

 

子ども達が固まる背景も基本的には

これらと同じシステムなのです。 

では、なぜこのような現象が生じるのか?

 

固まる原因は脳の働きに原因が

脳の層構造

あなたは脳は複数の層に分かれていて、

それぞれの部分が連携し合って働いている

という話を聞いたことはありますか?

 

子どもの医学協会の設立者であり、

発生生理学、神経生理学を専門とされている

荒井良氏が1979年に発刊した

「脳と健康」という本があります。

 

その中でされている説明は

脳のいろいろな働きを理解しやすいものです。

主要な部分に絞って紹介すると、

まず以下の図を見てみてください。

f:id:karadamental:20190820144222p:plain

赤い部分は最も古い脳であり、

「生きる」脳と言われます。

心臓や肺などを動かしており、

呼吸や姿勢など生命の維持を司る部分です。

 

その上に黄色で囲っている

「幅広く生きる」脳です。

食欲や性衝動、感情などを調整したり、

自律神経の中枢や感覚刺激の中継地点でもあります。

 

更にその上にで囲っている部分。

内側が「満足に生きる」ための脳です。

視覚・聴覚の記憶の中心となる部分で

辺縁系と呼ばれます。

そして外側が

「どこまでも満足を求める」脳です。

色々な刺激を統合したりするのですが、

重要な点としては意欲を司る部分です。

 

これらの脳の部分がそれぞれ連携し合って、

人間らしい生活を送ることが出来るわけです。 

刺激の働く経路

同書の中では、

刺激が脳のどこを通り、

どのように反応をするのか

ということも示されています。

 

簡略化した図ですが、

大体このような感じです。

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ここで大切なことは、

先程の

赤の部分

黄の部分

青の部分

と刺激が送られていくということです。

 

黄の部分は感情の調整などをするので、

送られてきた刺激に対して、

感情反応が強く働いてしまうと、

そこで刺激が止まってしまうのです。

 

そのため、

最初の例のように、

色々な感情が強く出る状況になると、

より上位の脳が担当する

言葉や思考などの機能がうまく働かなくなるのです。

 

なぜ発達障害の子は固まりやすい?

以前も紹介した通り、

発達障害のある子ども達は

神経に未発達があることが言われるようになっています。

 

神経に未発達がある場合には、

先程の脳の図の赤や黄色の部分の働きも安定していません。

そのため、感情の働きも不安定になりやすく、

黄色の部分で刺激が止まり、

固まってしまいやすくなるわけです。

 

固まってしまう子にはまず安心感を

安心感の重要性

トラブルが起きた時などには、

本人の脳の中では感情が大きく動いていて、

頭ではわかっていることでも、

言葉や行動に出来なくなります。

 

そのため、

  • 深呼吸をする
  • 水を飲む
  • 静かな環境に移動する
  • 少し時間を置く

といった行動を通して、

まず一度、気分を落ち着けることが大切です。

 

落ち着いてはきていても、

なかなかうまく答えられない場合には、

こちらの質問の仕方を

Yes,Noで答えられる

クローズドな質問にするのも役立つことがあります。 

 

言葉で表現出来ない時には他の表現方法も

元々ことばが苦手な子であれば、

クローズドに質問しても、

表現が出来ないこともしばしばあります。

 

そういった場合には、

文章として書いてもらったり、

絵で表現してもらったり、

色々な表現方法を試みることも役立ちます。

 

絵や文章などで描いて

自分の感じていることが表現出来てくると、

それに伴って言葉での表現の力も

伸びてくることも期待できます。

 

神経を育てる

最後に、神経系を育てる働きかけを通して、

根本的な赤や黄色の部分の働きを良くする

ということも出来ることの一つです。

 

神経系を育てる働きかけの工夫については、

他の記事で紹介していますので、

そちらも参考にしてみてください。

www.karadamental-brog.com

 

何も知らないと不可解な振る舞いにしか見えず、

場合によっては

周囲をイラつかせてしまいやすいのが固まるという現象です。

 

この記事を読んで、

その背景が分かることで、

対応を考えるヒントとなれば幸いです。

 

本文中で紹介していた“脳と健康”の本はコチラ。

古い本なので、なかなか手に入りづらいかもしれません。

ただ、脳や神経の働きの基本を知るのには、

オススメな一冊です