【心身の発達とセルフケアを考えるからだメンタルラボblog】

様々な心理相談の現場経験や体験を基に、心身の発達や心と身体のセルフケアに役立つ情報や書籍を当事者・保護者・教職員や支援者向けに掲載しています。

心身健康に働くための仕事の教科書【発達障害でも働けますか?】

療育に来ている親御さんから、

「うちの子は障害者枠でしか働けないと思って…」

といった言葉を聞くことがあります。

 

ただ、実際のその子の様子を見ていると、

一般就労が出来ない子には見えないということもしばしば。

発達障害のある人が一般就労をすることは可能なのか?

一般就労をして働いていくために何を大事にする必要があるのか?

 

それを非常に分かりやすく解説した本が花風社から出版されました。

【発達障害でも働けますか?

 経済的自立とその先を目指すための成長戦略】です。

 

個人的にはこの本は読むことで、

仕事の悩みについて、

認知療法を受けるような効果があると感じています。

 

発達障害のある方だけでなく、

社会に出るのに不安がたくさんあるという就活中の方、

仕事をしているけど納得がいかないことが多いなど、

仕事について悩むすべての人に役立つ一冊です。

 

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 目次

 

著者について

本書の著者は座波淳(ざなみじゅん)さん。

産業領域で臨床心理士として働いておられる方で、

神田橋先生の門下生のお一人です。

 

前回の記事、花風社セミナー

「発達障害でも働けますか?」の講師をされていた、

まさに健康的という言葉が似合う心理士さんです。

www.karadamental-brog.com

 

 

2020年には、

大阪でも講演会をしていただく方向で

現在調整中ですので、詳細はまた後日。

 

【発達障害でも働けますか?経済的自立とその先を目指すための成長戦略】について

目次

第1章 職場の大原則

第2章 コミュニケーション力について

第3章 ストレス対処について

第4章 ワーク・ライフ・バランスとワーク・イン・ライフ

第5章 トラブル・パワハラ・邪魔に巻き込まれたとき

第6章 トラウマ対処

第7章 スペクトラムをずらす

付録 「発達障害は治す」という発想の転換~可塑性を利用した神経回路の発達促進~

内容について

まず基本的な職場におけるルールの解説から始まり、

そこから職場で問題となる、

コミュニケーション・ストレス対処

・仕事の位置づけ・トラブルについて、

といった職場で起きる様々な問題への解説、

対応の紹介がされます。

 

そして、この本で特徴的な部分として、

職場で問題となる行動の背景となる

トラウマの問題について、

ポリヴェーガル理論を基に対処方法が紹介されます。

 

付録で収録されている

「発達障害は治す」という考え方については、

これまで花風社が得た知見が、

背景となる理論も含めて、

ひとまとめになっており、

この部分だけでも

一冊の本としての価値がある内容です。

 

感想 

適切な仕事観とは?

私個人は、

心理士として非常勤で色々な職場で勤務してきました。

その中では営業の仕事をすることもあり、

普通に院に進んで、

病院などに常勤として就職した心理士よりは、

色々な職場や仕事の形を見てきていると思います。

 

それでも本書の中で紹介されていた仕事観は、

「あぁなるほど」と目から鱗なところも多く、

これまでの経験を振り返って、

過去の職場でうまくいかなかった体験や、

なんであんな振る舞いに至るんだろう?という人を、

仕事観が更新されて理解し直せたように感じます。

 

本書の序盤には

「労働現場において、障害があるかどうかはあまり関係がない。

 大事なのは、仕事ができるかどうかだけ。」 

という言葉があります。

 

以前から、

社会人へのカウンセリングにおいて、

心理の問題だけを扱おうとすると、

結局、聞いてもらって気分は楽になったけど、

職場では相変わらず居場所がなくて辛い。

となってしまうこともあると感じていました。

 

この悪循環への対応の一つが

仕事観へのアプローチなのでしょう。

 

もちろん気持ちのサポート自体も必要ですが、

根本的に基本のルールが間違っている状態では、

結局、仕事は出来るようになっていきません。

 

そこに対して、

ずれたルールにアプローチしていくこと、

そしてそれを可能であれば、

小さい頃から少しずつ体験的に学んでいってもらう。

それが将来の就労を支えるポイントなのだと理解しました。

 

そして、その部分を指摘して話し合うということは、

愛着に課題があったり、

傾聴の考えに縛られすぎていたりする心理士は

伝えることが出来なくなるだろうなとも連想しました。

 

思えば、

花風社がずっと誤学習という名前で、

指摘していたことですね。

が、本書に至るまで、

なんとなくの理解のままで、

はっきりとは自覚できていなかった

自分の鈍感さには悔しいものがあります。

  

コミュニケーションとストレス

この2つはどちらも

自信がないと避けがちになるものです。

ただ、どちらも働く上では避けることが出来ません。

 

本書の中では

コミュニケーションの考え方、

ストレスの捉え方を改めて見直しており、

それぞれの不安を軽減してくれます。

 

特に「寛解」という言葉についての考察は、

メンタルの不調などを抱え、

復職した人などにも安心感を与えるものだと思います。

 

また、これはよく研修でもお伝えすることですが、

自分の適切なストレスを捉え、

そこを乗り越えた後に、

少し耐えられる負荷量が上がる。

それを自分で観察していくことは、

自分の心身への自信をつけていくのに

大事なステップになります。

 

この部分は、

そのための基本的な捉え方を学ぶのに、

非常に優れた教科書になります。

 

人生における仕事の意味

本書の中で、

最も自分の中でのパラダイムシフトを感じたのがこの点です。

 

長時間労働の問題が取り沙汰され、

仕事をしたくない、

仕事をしていても楽しくない。

そして、不満を抱えたまま働き、

トラブルが起きたり、注意や指示を受けると不快になる。

そのような人々も増えてきています。

 

この部分を読んで、

私も少なからず、

自分の仕事についての軸が

定まりきっていなかったのだなぁ

という実感を覚えました。

 

 

特に

「邪魔があってもなお発揮できるのが、自分の真の実力である。」 

この言葉には、

過去の自分について、

色々と反省するところが思い浮かびました。

 

厳しい言葉にも取れるかもしれませんが、

これは自分に責任を持てているということですし、

結果的にその方がストレスも軽くなるはずです。

 

この想定でやれると思えない段階の人もいるとは思います。

ただ、

そういう人がやれることも本書では紹介されており、

自分が変わろうという気持ちがあるのであれば、

必ずその助けになる情報が見つかる

貴重な本だと思います。

 

その他

支援する側の経験の乏しさ

本書を読んでいて、

心理士などの発達障害の子どもたちに関わる大人の

社会経験の乏しさというのは

非常に根深い問題であるように感じました。

 

特に医療や教育、福祉の領域で常勤として、

ずっと働いていると、

その職場の当たり前が社会全体の当たり前になります。

 

ただ、色々な現場を見てきた

個人的な感想としても、

医療や教育、福祉の領域が一般的な社会からすると、

ずれた常識がまかり通っていることも少なく有りません

 

その常識に染まった人々から支援を受けることで、

社会は怖いものだと学んでしまう。

そうなってしまう事態を避けるために、

支援者は意識的に社会のことを学ぶ必要があると感じます。

 

そして、支援を受ける側も、

相手の社会常識がどの程度あるのか、

そういったことを推し量る必要がある

時代なのかもしれません。

 

発達障害である=普通のことは出来ないという思い込み

就労支援も含め、色々な現場で感じることですが、

発達障害というものに対して、

普通のことは出来ないものといったイメージを持つ

支援者も少なくないように感じます。

 

これは実際に言語による支援だけを行い、

うまくいかなかったという体験から、

その信念が作り上げられている場合もあると思いますが。

 

発達障害の理解が強く求められ続けたことによって、

そのような事態が作り上げられてきたという側面も

あったのではないかと本書を読んで考えさせられました。

 

そういった支援者が変わるのを待つよりも、

親御さんが各自で学び、工夫して変えられる、

そういう時代になっていく方が早いのかもしれません。

 

発達障害に対して出来ることがあるというのが

もっと広まっていき、

自分の力で働いて、

自分らしく人生を送れる。

 

そんな人が増えることを、

私の仕事の目標にしたいと改めて考えました。

  

仕事に悩まれている人々、

お子さんの就労について心配している親御さん、

そして発達障害の子どもたちに関わる支援者。

 多くの人々にこの本が届くことをお祈りします。

 

 

 

本書の中で紹介されている書籍のオススメ3点

自閉っ子の心身をラクにしよう!睡眠・排泄・姿勢・情緒の安定を目指して今日からできること 

発達障害のある子どもたちの身体の特徴、

それがどのように問題行動に繋がっていくのか。

そして、それをラクにするための

コンディショニングを初めて紹介した一冊。

 

 

感覚過敏は治りますか?

感覚過敏の起きる背景にはある、

様々な感覚器官の未発達、

それを育てるために

家庭で出来ることを紹介する一冊。

 

脳みそらくらくセラピー

脳を元気にするための日々の工夫を学べます。

詳しくはこちらの記事から。

www.karadamental-brog.com