以前、
タッピングで身体のトラウマケアから脳機能の発達まで【マコ・川村のタッピングセラピー】 - 【心身の発達とセルフケアを考えるからだメンタルラボblog】
で紹介したタッピングによるトラウマケアが、
最近は現場でかなり使えるようになり、
オンラインでもトラウマケアが出来るようになってきました。
今回はその体験から思う、
トラウマについての現時点の理解と
いただいた体験談をご紹介。
トラウマとPTSD
その本人にとって強いショックを与える体験をトラウマ体験と呼び、
それによって日常生活に支障が出ている状態をPTSD(心的外傷後ストレス障害)と言います。
PTSDの詳しい症状は色々なところで解説されておりますので、
ひとまずここでは触れません。
PTSDの理解については、
神田橋先生の捉え方がわかりやすいかと思っています。
「PTSDとは,ある心理的な外傷体験の記憶,その記憶の再生に関連して起こってくる,不安状態が,現在,「here and now」で動いている精神活動に阻害的に働くこと」(神田橋條治 PTSDの治療 臨床精神医学36号 2007)
簡単に言うと、過去のショックな体験が再生され、
それとともに過去の不安定な状態が再現されて、
今の活動に何らかの支障をきたしている状態です。
この過去のショックな体験が再生される現象が
いわゆるフラッシュバックと言われるもので、
これは映像的に思い出されるとは限らず、
特定の状況になった時に、
「なんとなく落ち着かない気分が出てくる」
「どうしても緊張して焦ってしまう」
「わかっているのにイライラする」
といったような、雰囲気や気分としてフラッシュバックされることもあります。
ただ、雰囲気のフラッシュバックはどれがそうかわかりにくい人も多いので、
自分の体験からイメージしてもらうのにわかりやすいフラッシュバックの例としては、
日常生活をしていて、
ふと前にあった嫌なことが思い出されて「あ~」っとなるといったものです。
体験的にはそうなる記憶はだいたいトラウマ処理が可能です。
このようなフラッシュバックが起きている時をイメージしてもらうと、
嫌な記憶を思い出しているという頭の中での理解とともに、
身体の方でも「胸がぎゅっとなる」「肩が重い」など、
嫌な感覚が生じていることがほとんどです。
これが近年、
色々なトラウマ治療の理論の中で指摘されるようになってきている、
トラウマ記憶は頭だけでなく、身体にも記憶が残っているということです。
そこで近年のトラウマセラピーなどでは身体へ働きかけ、
身体に残っている記憶の処理を行うものが増えています。
特に幼い時のトラウマなどには、
まだうまく言葉が使えなかった頃のものなどもあり、
そういった頃のトラウマは言葉だけで処理をしようとしても言葉にならず、
うまくいかないといったことがあり、
身体への働きかけをしないと処理が出来ないものがあります。
またそれとともに、
フラッシュバックには神田橋先生が同書にて
「抗精神病薬が効かない」(神田橋條治 PTSDの治療 臨床精神医学36号 2007)
という重要な点を指摘しています。
神田橋処方と呼ばれる漢方薬の組み合わせによって、
軽減する方法も神田橋先生は見つけられていますが、
そうでなければトラウマに対してのケアをせずに、
医療につながっても効かない薬を飲むだけとなることもあるわけです。
トラウマで日常生活に生じる影響
例えば、
「父からよく怒鳴られていた」といった体験が
トラウマとして残ってしまっていると、
父と似た雰囲気を持った人が怒鳴るような場面を見た時に、
怒られていた頃の感覚や雰囲気がフラッシュバックして
言い返すことができなくなる、
嫌だと思っているのに従ってしまう、
といった反応が生じていることがあります。
また、学校で恥をかいた経験が
トラウマとして残ってしまっていることで、
大人になってから人前で何かをするという場面になると、
その時の恥ずかしさや緊張感がフラッシュバックし、
どうしても緊張して言葉が出なくなってしまう、
なぜか涙が出てしまう、
そういった自分でコントロールできない行動となることがあります。
職場のある人に対して、
どうしても不快感を覚えてしまう、
いちいち発言が引っかかる、
そういった場合にも、
トラウマを処理すると、
そんなに気にならなくなった。
という場合も少なくありません。
具体的な場面で困ることもそうですし、
トラウマになっていると、
それに近い状況を避けようとすることで、
無意識に生活が狭まっていることもあり、
色々な心理症状の背景として、
トラウマは大なり小なり影響があるものだ感じています。
また発達障害のある子や大人のパニックの背景には、
フラッシュバックの影響によって生じているものもあります。
以前、大阪で講演していただいた
臨床心理士の座波さんも
著書の「発達障害でも働けますか?」の中で、
「可塑性を利用した脳神経回路の発育促進」という項目の一つに
フラッシュバックの処理を挙げ、
発達障害のある人の支援に重要な要素であることを述べています。
そういった点からも、色々な事例において、
トラウマをケアするという観点は
心理治療においては非常に重要となります。
ずっとカウンセリングを受けているけど良くならない。
日常生活で嫌なことをしょっちゅう思い出してしまう。
そういった悩みがある人は一度トラウマケアを体験してみるといいかもしれません。
最後に、いただいたトラウマケアの体験談をご紹介
体験報告
この体験をくださった方には計3回オンラインで、
合計9時間ほどかけて、
KALGOというタッピングによるトラウマケアをご体験いただきました。
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KALGOタッピングを数回受けさせてもらった感想として、
真っ先に表現できることは、体であったり脳であったり、
刻まれたものは誤魔化せないという事実があるということ。
自覚があることも、そうでないことも、
奥深いところに残ってしまっているのだということを知った。
KALGOに関して全く知識のない状態で開始したことは、
かえって私にいい結果をもたらしたと思う。
頭で考えることを優先する癖のある私は、体の反応に鈍いところがあり、
仮に反応を認識できても、それを分析しようとする。
受けさせていただいたあとも、これといってKALGOに関して調べることはしなかった。
どこに反応が出たかは終わったあとに確認し、
過去の経験と照らし合わせて、毎回大きく驚かされた。
施術者は、私の過去をすべて見てきたわけではない。
それでも、KALGOを行ってもらう中で現れた私の反応と、
各ツボの意味を結びつけると、「え、どこかからみてました?」と発言せざるを得ない。
自分の中で消化済みだと思っていた記憶や、あえて眠らせたままにしている記憶。
受けた仕打ちと、当時の自分が分析していた相手の状態は、
驚くほど正確にKALGOで洗いだされた感じだ。
言葉の力で自己に納得させてきたトラウマは、
これといって日常的に暴れることはなかったが、
「これがなければもっと可能性が広がるだろうな」という程度にはしこりとして残っていた。
トラウマは悪い意味でストッパーになることがあり、
特に人間関係で、相手に踏み込みすぎないことや、自分に踏み込ませすぎないことに繋がっていた。
施術者との出会いがあった頃、
なんとなく自分の中に変化の兆しのようなものを感じ始めていた。
それは人との関わり方を変えたい気持ちや、
自分を優先させてもいい頃なのではという思いの芽生えを感じるという具体的な形で起こっていた。
KALGOの回数を重ねると、少しずつ変化が現れた。
心で「仕方ない」と納得してきたことでも、
体にとってはそうではなかったのかなと思うことがあった。
自分でのみ込んだ気持ちであっても体には負担だったのかなとか、
心と体の整理の仕方が異なっていたから辛かったのかなとか、色々と考えた。
でも、今回そういうものが長く続かなかった。
もやもやとした霧がかからなかった。
むしろ、そういう霧が晴れたような、いい意味での「無」が感じられた。
すぐに大きな変化が出なくても、
変化を起こすためのとっかかりがつかめるというのが実感としてある。
これまで、心にストッパーをかけていたものが、
過去のトラウマに起因するものだったことはうっすら気づいていたが、
それをどう解消してよいものか分からないかった。
自分の中で完結させていたトラウマは、
思いのほかうわべだけのものであったことも知った。
KALGOを受けて、すべてが好転するわけではないだろうが、
好転させるための「新しい状態」をもたらしてくれると感じた。
そして、手にした「新しい状態」を維持できるようになった。
生活をより良いものにするために、トラウマはない方がいい。
残っている反応は誤魔化せなくても、
なくすことはできるのだと体で感じながら毎日生活している。
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この体験とあわせて、
過去の飲んでいたことのあるお薬のことについても、
非常に面白いご報告をいただきました。
また、それについては次回の更新で。
本記事を読まれて、
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