【心身養生を考える からだメンタルラボblog】

身体と心へのアプローチを実践しているからだメンタルラボの活動情報や、鹿児島市での活動を地域支援活動を行うこだちの活動情報、身体と心のつながりについてのお話などを掲載しています。

愛着の問題を読んで乗り越える【愛着障害は治りますか?自分らしさの発達を促す】

愛着という言葉を

聞いたことがあるでしょうか?

 

この愛着の問題というのは、

虐待などの関係で使われることの多い用語でした。

 

ただ、最近では虐待だけではなく、

自分らしく生きられるかどうかに関わる

誰にとっても重要なものだと

言われるようになってきています。

 

今回は、

その愛着について非常にわかりやすく解説し、

読むことがその問題を乗り越える手助けにもなる良書

“愛着障害は治りますか?自分らしさの発達を促す”

ご紹介します。

 

自身の愛着の問題に悩む人はもちろん、

学校の先生や支援者の方にも是非、

読んで頂きたい一冊です。

 

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 目次

 

著者の愛甲修子さんとは?

臨床心理士と言語聴覚士の資格を持ち、

現場でご活躍をされている先生です。

 

以前、花風社主催の講演会で、

愛着についてのお話を伺った際には、

その話し方や声の雰囲気だけでも、

癒やされる人が非常に多いだろうと感じました。

 

その上で、

鋭い観察と経験に裏打ちされた

明瞭なご助言の数々が衝撃でした。

 

その実力の背景には、

精神科医の神田橋條治先生と

行動療法の大家村瀬嘉代子先生を師匠として、

修練を積まれたという実績があり、

私の尊敬する心理士の一人です。

 

花風社から愛着障害は治りますか?以外にも、

脳みそらくらくセラピー”という本も出版されており、

こちらも非常に良書で、また紹介したいところです。

 

愛着障害は治りますか?自分らしさの発達を促すについて

目次

まえがき

巻頭漫画

第一部 愛着障害を知る

第二部 愛着関係を育て直す

第三部 愛着障害に手遅れはない

第四部 愛着障害を治すべきか-これからの時代をいきるために

あとがき

こういう本を読んできました 

 

内容

第一部

愛着理論の成り立ちから、

それにより現れる症状、

現在の愛着障害の捉え方が紹介されます。

第二部

なぜ愛着が育て治せることがわかってきたのか、

育て直すためにはどんなことが出来るのかが

子どもたちの事例を交え、説明されます。

第三部

大人の愛着障害をテーマに、

15のポイントを挙げ、

大人になってもできる

愛着の育て直しのための方法が紹介されます。

第四部

最後の総まとめとして、

愛着の問題が

クローズアップされるようになった背景が、

現代という時代背景を基に説明されます。

 

感想

愛着の問題を誰かのせいにしなくていい

私がこの本を多くの人に知ってほしいと

強く感じた理由の一つがこの点です。

 

愛着の問題は色々な形で話題となっており、

いわゆる「マザコン」や、

モンスターペアレント」、

毒親」、「虐待」などなど、

近年言われるようになった

様々な人間関係の問題には

愛着が関わっていると私は考えています。

 

そして、

そういった部分に苦労をして、

乗り越えたいと思い、

意欲的にそういったテーマの本を買って読む。

 

そうすると、そういった多くの本は、

家族に対する恨みや自分自身の不全感を強め、

「だから私は辛くても仕方ない」

「こんな親に産まれて不幸だ」

「家族は頼れないもっと頑張らないと」などと、

ネガティブな方向に向いてしまう本が多いのです。

 

そうなってしまう裏には、

そのような作品は、

著者自身の愛着の無意識的な自己治療として、

生み出されている場合が多いためだと思います。

 

この本は、

そういった問題を乗り越えるために触れると、

蟻地獄のように

その深みにハマることの多いテーマを扱いながらも、

自分の状態を前向きに捉え、

自分がその問題を乗り越えていくためのヒントをくれます

そして、これは著者の癒やしの力なのか、

読むだけでも愛着障害が軽くなることさえあるのです。

 

この点が、最もこの本を

多くの方に知ってもらいたいと思った動機です。

 

様々な問題行動にある背景

第一部では愛着の問題が関わる

様々な症状が挙げられています。

いくつかを紹介すると、

  • 母子分離不安
  • 過度に良い子でいようとする
  • 万引きや暴力などの反社会的行動
  • 自分で選んで決められない
  • お友達がつくれない
  • DVの加害者、被害者
  • ストーカー
  • ペットの多頭飼い
  • プレイボーイ、プレイガール

 などなど

様々な状態像が愛着に関係すると指摘されています。

 

他にもありますが、

これらを見ていくと、

人が生きづらさを抱える背景に

愛着の問題が如何に影響しているのかがよくわかります。

 

そして、これらの問題の中には、

ストーカーやDVなど社会問題となり、

事件になっているようなものも含まれています。

 

これらに愛着の問題と関わっているとするのであれば、

愛着を育て直す関わりというものが、

幅広く認知されていくことは、

色々な社会問題が解決していくために、

非常に重要なポイントとなるのではないかと感じました。

 

いわゆる問題行動といわれるものの背景の、

愛着の満たされなさを感じ取らずに、

指導、矯正をするだけでは問題は解決しない。

そういった視点が広まっていってほしいと思います。

 

時代の変化

第四部で語られている

「時代と愛着の問題の関係」。

 

これは私にとっては、

この本の中で最も治療効果の

高い部分でした。

 

要約すると、

今の時代は人権が重視されるようになった。

それに比べて、少し昔の時代、

人権が認められていなかったり、

ないがしろにされることが当たり前だった。

そういう時代には、

「自分らしさ」というものは認められなかった。

しかし、時代は変わってきても、

前時代の生き方を引きずっている人も多い。

といったような話です。

 

保護者や周りの年長者が生きていた時代は、

前時代的な生き方が主流だった可能性もあり、

自分の周りがそういった人たちばかりであると、

周りからの圧力に、

自分らしさが潰されてしまうこともあります。

 

そんな時に、今は自分らしさが認められる時代であり、

「自分らしく生きることが悪いことではない」

というメッセージを受け取ることは、

非常に強い心の支えになりました。

 

是非、「今の自分の生き方が正しいのか分からない」と

不安を感じている人々は手にとってみてください。

 

その他(気になった点や疑問点など)

愛着の問題についての自身の体験について

この本を読み、

私自身がこれまでやってきたことが

愛着の問題を乗り越えるもがきだったのだと

理解が出来ました。

 

特に大学生の頃までは、

常になんとなく不安な感じ、

落ち着かない感じ、

自分がここにいていいのだろうかという感覚が

ぼんやりとつきまとい、

周りの人の機嫌を伺う、気にする、

言われたことに動揺しやすい

といった傾向がありました。

 

その頃は毎日、夕方になっていくにつれ、

一人で帰ることとなると、

どうしようもなく孤独で落ち着かなくなっていました。

ところが、

誰かと一緒にいるから、それが満たされるのかというと、

そうではなく、やっぱり不安なままなのです。

 

本書の中で引用されている。

「虚しく寒々とした、身の置きどころのない、見捨てられの雰囲気や気分に振り回されている体感」 

がまさに、という状態でした。

 

本書の15のヒントを参考にすると

  • 友人との関係の中で信頼関係の再構築される体験
  • ヨガや動作法でのから心身の緊張の緩和
  • 神田橋先生に習った気功などでのフラッシュバックの軽減

といったことを通じて、

私の愛着の問題は軽減されてきたようです。

 

そして、本書で、

自分らしさを尊重していい。

「ノー」を言っていいのだ

ということがすっと納得でき、

そこから自分の中では更に大きく変わりました。

  

その感覚が身につくと、

これまで自分の行動を

いかに自分が制限していたのかを理解でき、

それとともに周りが言っていることが

客観的に見て正しいのかを落ち着いて考える

ことが出来るようになりました。

 

そしてそうなると

日常で感じる不安が大きく減るのです。

不安を感じても、

それに振り回されずに取り組むことが出来るようになります。

 

恋愛関係においても、

「この人と一緒にやっていく」という覚悟を

しっかり出来るようになったのも

愛着の問題が乗り越えられてからでした。

 

このように多くの点が、

愛着の観点から変化してきたと感じています。

 

支援者にとっての愛着の問題

愛着の問題がある相談者やクライエントは、

客観的に見ると「どうしてそんな捉え方を?」、

「なんでそんなに不安なの?」と

不思議に感じる振る舞いをしていることがあります。

 

そういった時に目の前の行動だけを対処とするのではなく、

その背景の愛着の問題という視点があることは、

相手に寄り添える可能性を高めるだけでなく、

改善の可能性を大きく広げるものです。

 

また、支援者自身に愛着の問題があると、

相手にとって嫌なことでも必要なことは伝えられなくなり、

自分の出来る範囲、責任のある範囲と、

そうでない範囲の基準が曖昧になってしまい、

いわゆる共依存という状態に陥りやすくなります。 

 

そして、支援者自身は

それを自覚していない場合が多いです。

 

自覚なく共依存に陥る危険を避けるためにも、

対人援助職を志す人には、

是非読んでもらいたい一冊です。

 

読んでほしい人

繰り返しになりますが、

この本は

愛着の問題に悩む当事者はもちろんのこと、

支援者や学校の先生、

それを志す人にも読んでもらいたい一冊です。

 

愛着の問題を乗り越えることは、

自分を大切にすることであり、

それはひいては相手を大切にすることにも繋がります。

 

この書評を読み、

ご興味を持った方は、

是非一度ご覧になってみてください。