令和2年1月13日(月・成人の日)に
特別講演会「発達障害の自立と未来」が開催されました。
一週間前の天気予報では
日曜あたりからお天気が怪しかったのですが、
当日はお天気にも恵まれ、
多くの参加者の皆様にお集まりいただきました。
この記事はその講演会の終了報告です。
講演会の様子
13日のお昼前、新大阪駅にて講師である、
浅見さんと座波さんをお迎えしました。
駅内の飲食店で昼食を摂りつつ
今日の研修や仕事についてのお話を伺う中で
お二人の情熱を強く感じ、
今回の講演会への期待に胸が熱くなりました。
当日は13時から受付となっていたのですが、
開場時間である12時45分には
既にお待ちいただいている方もおり、
皆さんの意欲の高さを感じることが出来ました。
席も前の方から埋まっていき、
全国各地から来られた皆さんから
様々なお土産やお祝いをいただきました。
開始時間にはほぼ全ての参加者が集まり、
そして講演の開始です。
最初は浅見さんによる
「治ってほしいと思っていいんですよ 神経発達障害という突破口」。
この講演の中では、
これまで浅見さんが発達障害に対して
「治ってほしい」と思った問題意識から、
数々の知見を見つけてこられた経緯、
そしてそれらを踏まえて分かった
治すために大切なことが語られました。
浅見さんの講演を聞いて、
問題意識を共有できた読者の方々が
会場で販売していた多くの書籍を購入してくださいました。
講演を通して本を売ることに対して、
一部で批判的な捉え方をする方もいるかもしれません。
ただ、この講演を聞いて本を買われた方は
自分やお子さん、支援対象にとって、
「この問題意識から作られた本であれば読んで役に立つに違いない」
そう思ってくださったのではないかと思います。
そして、その本を実際に読んで、
現実に役立てることの出来る情報を得ていかれるはずです。
そう思える大きな要因は
浅見さんの講演に続いた座波さんの講演です。
タイトルは「発達障害でも働けますか?
~経済的自立とその先を目指すための成長戦略~」。
この講演の中で座波さんは、
ご自身が一般社会で働いた経験、
それに自身が心理職として、
一般社会で生きていくことを支えてきた経験を基に、
「働く」というのはどういうことかとお話してくださいました。
そして、「働く」ために、
花風社の知見はどのように使っていくことができるのか、
現実に適応させて運用していく方法が示されました。
このお話を聞かれた方々であれば、
お買い上げいただいた本から
現実に役立てることの出来る
情報を得られることは間違いないはずです。
約5時間の長丁場でしたが、
浅見さんのお話と
座波さんのお話がリンクし、
色々な連想が生まれるような時間でした。
皆さん集中して聞き入り、
自分の過去の経験に照らし合わせて納得し、
未来への希望を持たれたように感じられたのではないでしょうか。
帰っていかれる皆さんの表情の明るさがとても嬉しかったです。
その後は有志の饗宴となりましたが、
その中で聞こえてくる話も、
それぞれが家庭、職場、それぞれの現場の中で苦労しながら、
少しでも良くなる人が増えるよう頑張っている前向きなものでした。
こういった人たちが集まって、
少しずつでも良い結果を積み重ねていく。
それが広まってくることで
必要な人たちが救われるきっかけが出来る。
こういった循環が続いていくことが
治りたい人が治るための良い循環だと感じます。
主催者感想
盛りだくさんな内容の講演会だったので、
色々と考えさせられましたが、
今回はその中でも重要だと感じた二点について。
現実社会を生きるために
講演を通して非常に印象的だったのが、
「親御さんは障害の世界ではなく、
現実社会で生きてきた自分の感覚を信じてください」
という言葉でした。
発達障害などの診断を受けた時、
そこからさもこの子は別世界の住人であるといった感覚となり、
さらにそういった助言を支援者から受けることで、
より現実的でない方針へと進んでいってしまう。
しかし、そのまま進んでしまうと、
その先の受け皿は実はかなり少ない。
そうしてどこにも行き場がなくなってしまう結果、
色々な悲しい事件に繋がっていく。
そんなことを連想させられました。
少なくとも今回の講演会に参加された方たちにとっては、
お子さんが幸せになるために、
社会に出ていく力をつけていくために、
目指すべき方向が見えたのではないかと思います。
これからも少しでもそういった方が増えるように、
からだメンタルラボでは講座や講演会を継続していく予定です。
発達に終わりはない
また講演の中で、
「ゴールは就職、就学ではなく、
人間的成長をし続けることが目的」
といった言葉もありました。
心理学の世界でも一時期、
生涯発達という言葉が言われたことがありましたが、
それをより具体化したものが
今回の講演だったようにも感じます。
親御さんや支援者の中には、
就学、就園、就職などを機に、
そこで発達が止まってしまうかのような
イメージを持っていることがあります。
そういったイメージを持つ背景には、
デジタルにしか物事を捉えられなくなっている
心身の状態があるのかもしれません。
「もっと早く療育にかかっていたら」と言われたことが、
もうどうしようもないんだという固定的なイメージを
つくっていることもあるのかもしれません。
学問的に発達を学んだことで、
現実の発達というものの
感覚が乏しいこともあるのかもしれません。
色々な可能性が考えられますが、
いずれにしろ、環境が変わったのであれば、
そこから何を経験していけるのか、
どんなことを身に着けていけるのか。
そういったことを意識し続けて、
少しずつ取り組み続けることで発達していけること。
考えてみれば当たり前のことですが、
それを障害のある別世界の人と感じてしまうと、
その当たり前を考えなくなってしまう。
不思議なことです。
このことは、自分自身が成長し続けていくためにも、
子どもたちが将来の可能性を失う悲劇を防ぐためにも、
今後、意識し、伝え続けていくべきことだと感じます。
参加者感想
今回の講演会の中では、
様々な嬉しい報告が聞かれています。
掲載許可をいただいた感想の中からいくつかを抜粋してご紹介。
保護者のお立場から
「息子のことで花風社さんの本を読み、身体アプローチに取り組むうちに私自身の土台も育ってきたのか、以前よりもラクに働けるようになったり、失敗しても最小限のショックの後、対処をすぐにできるようになりました。座波さんのご著書を読んだり、今日のお話から、仕事をするとはどういうことか、できることを増やすためには…ということを常に意識して、明日からの自分の仕事に活かしたり、息子を将来働く大人に育てていくためにまずは自分が弛むことを大切にしていきたいと思います。」
「本を読んでぼんやりしていた部分が、はっきりした様な気がします。子どもと土台作りをしっかりしたいと思います。子ども本人に意志を聞いて尊重しているようで、まだまだ手を出したり、口を出したりしてしまっているので、ちゃんと見守ろうと思います。その為にゆるもうと思います。」
「障害があり働いている子どもが2人います。仕事ですぐ不安定な気持ちになってしまうことに心配していましたが…。仕事ではいろいろあって当たり前、それは定型でも障害があっても同じと気づくことができて、それが一番の収穫です。子どもたちにしっかり向き合っていきたいです。」
「本やネットで知った世界が目の前に広がった感じです。出来ることはたくさんあるので親子で弛みながら取り組もうと思います!!」
「私の周囲、子どもたちの周囲を見たときに、働くことをあきらめてしまった人、働き出してちょっとしたつまづきに「もう働くのは嫌だ」となってしまう人、職場を転々とする人などをたくさん見ます。自分の課題に取り組むことをせず、「会社が悪い」「周囲の人が悪い」「そもそも社会が悪い」と言うだけの人たちを見ると、もったいないと思います。発達障害というだけで、人生をムダにしくすぶっている人を見ると、一人でも多くの人に早く気づいてほしいと思います。働くことで得られることは多いのですから。」
「今日の講演も含めて、定型だと思われる自分に気づきを与えていただく内容だったと思っています。身体アプローチや栄養面での取り組みは息子だけでなく主人と私も一緒に (むしろメインで) 行っているので、子どもと一緒に無理せず成長していきたいと思います。社会人になった当初は定年まで働くイメージすら持てていなかったのですが、身体が元気でいる限り、仕事を続けていこうという気持ちになれました。どうもありがとうございました。」
「将来についてまだまだ具体的に考えられる状態ではありませんが、なんとか少しでも自分で生活できるように発達を促してやるのに、まずはしっかり土台を育ててやろうと思います。医療関係、福祉関係者からのアドバイス (?) が一般社会での生活とギャップがあることに違和感を感じていたので、座波さんのお話がとても納得できました。」
「登校しぶりの対応についても勉強になりました。学校のキャリア教育は「好きなこと」を中心にやっていますが、本来ならばその違いを知らせるのが大事だと思いました。「無理をさせたくない」という保護者、「それを受け入れなさい」という管理職、理不尽にも負けず、頑張ろうと思います。ありがとうございました。」
「発達障害の子の経済的自立、大きすぎる課題だと思っていたけど、仕事ルールというシンプルなことを前提にして質の良いストレスを体験してもいいのかもしれないと思えた。かわいい、楽しい、おもしろい子どもも身体は成長し力が強くなり子どもを作れるようになる。この2つを目前にして改めて子育てを考え直したい。」
「「組織とはどういうものか」等うかがううちに、なぜか「こんな私を雇用し続けてくれるバイト先への感謝」「息子 (自閉) がいい子だな~」という気持ちが湧いてきました。」
「発達のヌケ、モレを見極め埋めることの重要性を改めて認識しました。土台をしっかり育てること、親として子どもに適切なプレッシャーを与えることが成長のかぎだという新たな気付きがありました。浅見さんのお話と座波さんのお話につながりがあり、より理解が深まり道筋が見えました。福祉の枠 (枠外で) を超えて考えて良いという考えがより強くなりました。」
支援者などのお立場から
「障害がある、なしに関わらず社会人として当たり前のことを再確認させて
いただいた気がします。障害者支援も、指導ではなく支援、と言われて
できるようにならなくてもいい、みたいな言われかたをされていた時期もありましたが、一周回って適切な支援の必要性、に戻ってきたと思っています(現場ではずっと必要と感じていたことですが…)」
「本日は貴重な会を開催していただきありがとうござました。開会前に会議室に入った時点で、参加者の皆さまの、そして講師のおふたりの熱気が感じられて、本当に貴重な学びの空間、機会だなー!と肌で感じていました。浅見社長のおはなしと、座波さんのおはなしを通して、“はたらく”、“より良く生きる“ということについて改めて考える機会をいただいた思いです。」
「発達障害が不治化し、産業になっているという事実と、企業の治らないのに医者に行く不毛さの指摘、浅見さんのお話と座波さんのお話がリンクして、考えさせられることが多い時間でした。」
「現在一般就労をめざす方や企業の方と働かせて頂く立場です。企業の方々とのおつきあいが深まるほど、福祉や特別支援教育の現実感覚のなさを思います。先生のお話に深く共感しつつ、日々の実践に反省させて働きたいと思います。」
「自分の援助者像が大きく変わるような講演でした。改めて自分ができること、対象者にできるサポート、その周りのサポートと、整理していく必要を感じました。」
「花風社の本を参考に勧めてきたことが、子どもだけでなく、どう大人 (お金をかせげる) にしていくか、悩みつつも行って来たことが、今日は間違っていなかったと確認できて、とても嬉しく、心強い思いです。」
「発達障害の方に限定されない考え方だと感じました。今自分が抱えている問題にもアプローチできそうな内容でした。ありがとうございました。」
「障がい福祉に限らず、福祉業界の考え方と現実社会の問には、大きな溝があると常々感じています。特に福祉の公的な研修会に出席すると、いつも違和感を感じているので、今日はどこで違和感を感じているのか頭の中を整理させていただけました。」「保護者の方へ伝えていきたいこと、たくさんありました。学校ルールから働くためのルールへの転換、働くためのルールを見据えた教育活動を図ることが必要だと思いました。」
「心理士に限らず、自分自身の心身が整わないまま、社会のルールを知らないまま、専門職として働いてしまっている福祉職の人たちは多いのではと思います。浅見社長、座波先生の客観も主観もひっくるめた愛のある言葉は、当事者の方やその親御さんだけでなく、私のような世間知らずの福祉専門職にも刺さるものがあります。私がまだ経験したことのない”社会”について、先生方のお言葉をたよりに学び続けていきたいと考えています。」
その他の講演報告や感想
今回の講師である浅見さんの講演報告はこちら
治そう!発達障害どっとこむの雑談のお部屋にて、
講演会にご参加いただいた方々の感想を見ることができます。
3月1日に「どこでも治そう発達障害」創立記念講演会を開催される、
ねこ母さんからも感想をいただいております。
今後の講座予定について
2月、3月にかけては2つの講座を開催予定です。
場所はいつもの講座会場である弁天町の剛斗館です。
護道講座
2月16日(日)PM予定
「脳と身体をつなげるための護道」
講師:廣木 道心
コンディショニング講座
3月22日(日)AM・PM・専門予定
「コンディショニング講座(タイトル未定)」
講師:栗本 啓司
2月講座の募集は近日開始予定ですので、
募集が開始しましたら、
またお知らせさせていただきます。