1月17日に行われたコンディショニング講座にお越し頂いた皆さま、
ブログにUPしていた終了報告を読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
さて、先日スタッフとコンディショニング講座について振り返りをしていたところ、
色々と思うことがあったので備忘録がてらブログにしようかと思います。
親子療育での介入について
先日のコンディショニング講座では、
午前の部に「子どもの動きや意図に合わせて大人が動く」ことを意識して、
子どもが主役となって遊ぶ時間を設定させていただきました。
参加してくださった皆さんの関わりの中で良かったところや、
子どもたちの動きや表情の変化について色々と振り返っていたのですが、
スタッフ側の課題として、
「参加してもらっている人に、支援者としてなんか介入しなきゃと思って焦ってしまった」
という意見がありました。
私達もこれまでの児童発達支援の現場で、
今回お越しいただいたお子さんたちと同じぐらいの月齢の子どもたちの療育を担当してきた経歴があります。
今回の午前の部のように親子で来所してもらい、
支援者も数名いる中で活動する「親子療育」もいくつか経験してきました。
ただ、その中で来所しているお子さんの中に、その時の心理状態や体調、
発達段階に合わない遊びを設定されているなどの理由によって、
親子療育での活動に参加できず、お父さんお母さんから離れられない子もいました。
他の療育施設と掛け持ちで来ていた親御さんからの相談の中には、
「他の施設で行われている親子療育に通っているが、子どもが馴染めず、
泣きっぱなしの状態で数ヶ月参加している」というような話も耳にすることがあり、
親御さんにとっても辛い思いをしながら集団療育に通っているというような話も
しばしば聞くことがあるものです。
本来、親子療育で支援者側が用意した遊びに子どもが参加できなくても、
その子なりの参加の仕方があるはずで、
現場でも発達について知識と経験のある保育士さんなどは、
「どういった参加の仕方でも、その子に合わせて過ごせるほうが良い」と考えていらっしゃる方もしばしばおられました。
その反面、「なんか介入しなきゃいけない」「やらせないといけない」という姿勢で
その子に合わせるという意識はないような支援者も少なからずいました。
よくある場面として、
親子療育で設定された体操遊びの時間に、
参加できずに部屋の隅で顔をうずめて座っている子がいる。
側にはお母さんがついてくれている。
支援者も子どもの側に寄り隣に座っていると、
少し緊張が解れた様子でお母さんと支援者、
交互に抱っこやおんぶを求めるようになった。
側にいたお母さんだけでなく、
支援者ともやりとりの輪を広げることができ、
次第に他の子どもの活動の様子をじっと見ておけるようにもなっていた。
すると突然、別のスタッフがやってきて「なんでやらないの?」「ほらいくよ」と
その子を抱き上げて活動の場に入れてしまった。
子どもは一瞬驚いた表情を見せた後、「嫌だ!」と言いながら涙を流していた。
お母さんはオロオロとした様子で子どもについていき、
「○○ちゃん、がんばろう」と子どもを励ますように声をかけていた。
こういったやりとりは療育の現場でしばしば見られるものです。
支援の現場での枠
支援の現場ではよく「枠組み(通称「枠」)」という言葉をよく使います。
療育などで支援者側が設定する時間や、遊びのプログラムのことだったり、
「この中であれば自由にしていいよ」という許容範囲、
リミットのような意味合いでも使われています。
今回例に挙げたような親子療育では、
活動と時間の「枠組み」がきっちりと決められていることが多く、
そこに合わせられないお子さんに対して、
「親子療育のプログラムという枠組みに参加しているのだから、
ちゃんと枠に合う形で参加させたほうが良いだろう」という
考えを持ったスタッフが行動した結果起こった出来事ではないかと考えられます。
このような問題については、
限られた時間の「枠組み」の中で、流れるように度々こういうことが起こると、
「一応プログラムは無事に終わったし」とうやむやになってしまったり、
職場内のパワーバランスによっては、意見したいのに言えないままになってしまう、
ということも現場で働く方々なら経験があるのではないでしょうか。
特に現場に出てまだ経験の浅い立場の支援者などは、
先輩の行動に対して「ちょっと待った!」というどころか
「枠組みを守って、きちんと参加させるほうがいいのか・・・」と
勘違いしてしまい思考停止状態に陥ってしまう可能性もあります。
冒頭のスタッフの「参加してもらっている人に、
支援者としてなんか介入しなきゃと思って焦ってしまった」発言は、
そういう経験の名残が、今回のような最小限に設定した「枠組み」の中で、
「なにか設定をしてあげないといけない」とか、
「親御さんになにか声掛けをしたほうがいいのかな」など、
条件反射のように「枠組みづくりをしないといけない」という焦りが出ていたのだろうと思います。
支援者側のそういった働きかけに
「ちゃんと参加させたほうがいい」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんし、
就園や就学を見据えて「少しでも枠組みのある活動に慣れてもらったほうが安心」と考えている方も多いかもしれません。
また、例えのような対応も成長するための一つの試練として捉えることもできます。
ただ、それは大人の側の都合であり、子どものために考えられたものなのでしょうか?
実際、過去の施設ではスタッフが
「設定をこちらが決めるのではなく、自由に思いっきり遊ぶという枠組みで時間を作ってみてはどうか」と提案したことがあるそうですが、
「”プログラム“という名前がついている療育でないと、集客が望めない」と言われたそうです。
支援者が枠組みを強固にするほうが何かと都合がいいという考えで作られている部分もあるのではないでしょうか。
子どもは発達が進むにつれて自然と集団に興味が出てくるはずです。
例えば、「支援者なくとも自閉っ子は育つ」の中でこよりさんが、
お子さんが集団に興味を持つペースに合わせて
働きかけていった過程のような形が自然なのではと感じます。
みなさんはどう思われますか?
療育の利用において
現在、児童発達支援を行っている事業所がたくさん増え、
それぞれの事業所のカラーでサービスを提供しています。
子どものためにどういうところを選んで使っていくのかは
各ご家庭が判断するところですし、
良し悪しは子どもと親御さんが最終的に決めていくところになります。
子どもへの関わり方、子どもにとって心地の良い枠組みの設定への配慮は、
もちろん支援者側が何度も検討を繰り返し、
努力して構築していくところではありますが、
残念ながら上記の例のように、職員間で考え方が一致していないケースもあれば、
子どもによって心地よい枠組みではないかもしれないのに、
改善されないまま放置されている、というケースも存在するようです。
今療育を利用されている親御さん、
これから療育を検討していく親御さんには、
「うちの子に合った枠組みかどうか」ということを頭の端っこに置いて検討してもらえるといいな、と思います。
今回の講座は私達にとっても
「子どもの意図や動きに合わせる」というテーマでの新たな試みとなり、
これまで経験してきた療育とは異なる枠組みで子どもたちと関わることができました。
長年支援の現場で働いてきていても
なかなか見られない表情の変化にも出会うことができ、
現場で作られてきた考え方や関わり方の癖に気づく良い機会となったよう思います。
参加した皆様にとっても得るものがあったようであれば幸いです。
また今後も、
この形の親子講座は試行錯誤しながら続けていけたらと思っております。
今後の予定については、また続報をお待ちくださいませ。